梅田本(初版)を入手

初版が怒濤の勢いで完売したと聞いたので、自然と本屋に探しに行くという発想すら湧かなかったのだが、「在庫があって、買えた」と聞いたので行ってみると「まだ並んでいるではないかぁー」. ということで無事に買えました.


濃密な議論を一冊に凝縮された本であるので、勉強になることばかりなのであるが、昨年いろいろと定義および意味で議論を巻き起こしたWeb 2.0についての説明は網羅性が高い. 例えば、

Best (Or Most Interesting) Web 2.0 Definitions and Explanations
http://web2.wsj2.com/review_of_the_years_best_web_20_explanations.htm

なんかでTim O'ReillyやPaul Grahamをはじめとするエッセーが紹介されているのだが、個人的にはこの本の"特に"第3章:ロングテールWeb 2.0 (pp.120あたりから)と、第5章: オープンソース現象とマス・コラボレーションに本質的な説明がなされている. 日本語がわかるならば、↑のくどくどした説明よりも遥かに(お世辞抜きで)理解しやすい.

「ネット上の不特定多数の人々(や企業)を、受動的なサービス享受者でなく能動的な表現者と認めて積極的に巻き込んでいくための技術やサービス開発姿勢」(pp.120)

  • 誰もが自由に、別に誰かの許可を得なくても、あるサービスの発展や、ひいてはウェブ全体の発展に参加できる構造 (pp.120)
  • 自社が持つデータやサービスを開放し、不特定多数の人々がその周辺で自由に新しいサービスを構築できる構造を用意すること (pp.120)
  • サービス提供者が「個」に対して「あちら側」での利便性を提供する。「個」がその利便性を享受するために、いろいろな情報を「あちら側でオープン」にしていく。「個」が「あちら側でオープン」にした情報をサービス提供者が集積し、「全体」としての新たな価値を創出する。これが、Web 2.0時代のサービスの構造である。(pp.200)

(以上抜粋)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)


関連して、権威者/専門家よりも、一般のアマチュアを信頼するのも新しい現象の1つといえるでしょう (3、4章の内容などから). オープンソースというのがこれまた似た特徴があり、ネット上の陰も形も見えないアマチュアプログラマーらの仕事(彼らは仕事とは認知しないで趣味としてコードを書くようだが)を蓄積すると、1つのIT企業が優秀な社員を動員して企業秘密で製品(ソフトウェア)を作るよりも、できのよいものを産み出す可能性がある. その変化および潜在価値にいち早く気がついたIT企業らは、現在市場でリーダーシップをとることができている. 例えば、某I社とか. 自社社員を遣って、Tux君を巧みに飼いならしていますね.


ネットの登場が瞬時の情報共有を可能にし、それをベースとしてオープンソースが台頭した. グーグルもそれを意識してやったかどうかは定かではないが、(表面では閉鎖的とはいわれるが)内部では恐ろしく透過性の高い情報共有インフラ/思想を源泉にしているようだ (第2章: グーグル, pp.78〜).


個人的な話になるが、自分の研究室のプロジェクトが資金カットで人数が大幅に減ったせいか、マネージメント方針が徐々に変わってきたみたいだ. 以前は100人以上はいるわりと大きな組織で、「はっきりいって、内部や上層部で何が起こっているのかさっぱりわからない、意味不明な研究グループ」という感があったのだが、最近はwikiなんかを導入して情報共有インフラを作ろうとしたりとか、定期的にそれぞれの研究内容を頻繁にアップデート、発表させるように変わってきたことで、だんだんと「プロジェクトがいまどこ向かっているのか」を明確に把握しやすくなってきた気がする. 以前の時代でも意図的に情報を隠すようにはしていなかったと思うのだが、それでも情報が隠蔽されていてちょいと気持ちが悪かった. やはり、情報は開示して共有することに意味、価値がありますな...


それにしても、裏表紙のid:umedamochio氏、いい写真ですね.

追記 (2/15/06)

ふと思ったこと. この本の一部が大学入試問題に使われたれして..... 例えば○×△大学 情報工学科 後期日程なんかの小論文の題材とかで. まぁ、素人が思いつくことだから全力でありえへんでしょうが....