宇宙移民の展望 (1)

seihiguchi2005-11-18

21世紀の間に, 人類が宇宙で生活するのが当り前になる時代が到来する. 

宇宙空間には無数のスペースコロニーと呼ばれる人工の大地が建設され、数十億を超える人々が, 地上とほぼ相違ない生活を送ることができるのである. そして宇宙生まれの地球人が誕生する.


上記は1979年(自分が生まれた年!)放映開始のあるアニメのパクリに近い, むしろ同一とも言える記述であるが、全く非現実なシナリオではないと信じる. 個人的観測からいえば, 技術的な問題はクリアされていて, 問題となるのはコスト宇宙への関心をいかにして集めることができるかどうかだろう.

例えば, 1974年にGerard K. O'NeillいうPrinceton Universityの教授だった人が, The Colonization of Spaceというタイトルで, 1970年代の技術力の範囲での宇宙移民の可能性(Feasibility)およびコスト計算などを真剣に行っている.

(Wikipediaにある記事のリンクを辿っていると1日が終わってしまうくらいだ)


彼の論文 (The Colonization of Space)の結論は十分に現実的に可能である.

How can colonization take place? It is possible even with existing technology, if done in the most efficient ways. New methods are needed, but none goes beyond the range of present-day knowledge.


実現するには新しい技術が必要とは説いているものの, 特に難しいことではないと言っている. この論文が出版されたのは1974年という事実を考慮すると, それから30年以上経った現代の方がより(技術的な)難易度が下がっているのではないだろうか.

そして, 指摘される問題はコストである.

The challenge is to bring the goal of space colonization into economic feasibility now.


加えて, コロニーでの生活は地上のものと同じ快適さを提供できることが必須である.

The key is to treat the region beyond Earth not as a void but as a culture medium, rich in matter and energy. To live normally, people need energy, air, water, land and gravity. In space, solar energy is dependable and convenient to use; the Moon and asteroid belt can supply the needed materials, and rotational accelaration can substitute it for Earth's gravity.

また, 宇宙移民を成し遂げる(宇宙空間を人類の第2の故郷とする)ことの利益も幾つか述べている. 例えば,

  1. Protecting the biosphere from damage caused by transportation and industrial pollution
  2. Finding highquality living space for a world population that is doubling every 35 years.
  3. Finding clean, practical energy sources.
  4. Preventing overload of Earth's heat balance.
  5. The pain and destruction caused by territorial wars.


狭く限られた地球に寄生虫のようにへばりついて生きるよりは (= 地球の重力に魂を引かれている状態), 広い宇宙に目を向けると, 無限の可能性がある. なによりも地球への環境負荷が軽減するため, 地上の緑を回復させることを助けるし, 温暖化現象の進行をスローダウンさせる(またはストップさせる). 最後の問題については, 筆者はこれについて言及するのは少々ためらうが...とおいた上で, The history of the past 30 years suggests that warfare in the nuclear age is strongly, although not wholly, motivated by territorial conflicts; battles over limited, noextendable pieces of land, と言っている (当時は冷戦時代のまっただ中).

やはり当時(今も), (核兵器)は脅威であるためか, 「宇宙では核は必要ない」と強調している. なぜなら太陽エネルギーで十二分にエネルギー需要をまかなうことができるから.

The colonies can obtain all the energy they could ever need from clean solar power, so the temptations presented by nuclear-reactor byproducts need not exist in the space communities.


この記事は初回ということもあり, さらさらっとしか調べて書いていないのだが, 宇宙に人が住むことが実現し, それがすごく当り前で特別なことでないようになるというのは, 単にスペースエンジニア・サイテンティスト達の楽しみに終始するだけではないということが伺える. 単に面白いだけでなく, 人類全体にとって利益のあることであるといえそうである.

1) 太陽エネルギーを無尽蔵に利用でき, その効率は地上の数倍(数十倍だっtか?)よい. また, 完全にクリーンなエネルギーで生活することができる.

2) 居住スペースはほぼ無限にある(人類のサイズからして)ので, 狭い地域にわざわざ窮屈に住む必要がない (とはいってもいずれ, スペースコロニーでも都会・田舎という地域ができて, 東京やNew Yorkのような超巨大都市コロニーが出現するであろうが).

3) 宇宙へ進出するにあたり, いろいろと新しい技術や発見が出てくる. またそこから新しいビジネスのチャンスが無限に生まれる. えーと例えば, (a) 宇宙旅行用の保険, 海外旅行用の保険のような感覚. (b) 宇宙と地上を結ぶインターネット(とよばれているかどうかは分からないが)のサービス, ISP, (c) 月や小惑星帯から鉱物資源を採掘できる, (d) 宇宙空間で太陽光を利用した超巨大発電所を建設し、マイクロ波で地上へ送電する(これはすでに研究されている. Newtonでも紹介されていた), (e) 宇宙での不動産業, (f) これまた既にあるが, F-1レースのようなスポーツ (競技に勝つためにいろいろな最先端の技術が開発される), (g) 完全な個人的趣味だが, スペースコロニー内にゴルフ場を作る (deep spaceで体を固定してドライバーショットをしたら結構快感かもしれない!).

とまぁ、ちょっと考えただけでもわくわくすることがたくさんある. それではそれを現実のものするには具体的にどうすればいいのか?, ということを以降の記事で, 調べたり、考えたことを書こうと思う. 大きな課題としては,

  1. いったいいくらかかるんだ?
  2. スペースコロニーとはどんなもんだ?
  3. 建設のためのエネルギーや材料、人材はどう調達するのか? またそれらどう輸送するのか?
  4. 本当に投資することに意味があるのか? それよりも今地上で起こっている現実の身近な問題(飢餓, 貧困, 戦争など)を解決していくことが先決ではないのか?


最も早期にポピュラーになり, またそうならなければならないのが, 徐々に出現してきた宇宙旅行. これからの時代は政府機関よりも, 民間企業が主体となって宇宙開発を進行・リードしていくべき. 自由競争な原理が働くようになったら一気に加速するのでは? 個人的憶測としては,

1) 宇宙旅行が海外旅行のような手軽さになる (2010〜2030?) → 2) 地上⇔宇宙の往復移動手段のコストが下がる (2020〜2030)→ 3) 宇宙ホテルのような宇宙にだれでも長期滞在できる施設が, すごく普通に稼働する (2020〜2040) → 4) ホテルを稼働させるには, エネルギー(電気エネルギー、太陽光発電によるもの), 水(合成する), 食料などの供給手段がしっかり確立されなければならない (2030〜2050) .....そうするとコロニーができるのは2050年?

O'Neill氏の論文によると, 1988年にはコロニーの第一陣ができるとある (1974年に直ちにプロジェクトが開始されていたら...という仮定に基づく話で 直径100m, 長さ1000m, 総人口10,000人に及ぶ立派なコロニーができると予想している). 1988年ってインターネットや携帯電話も一般人には縁のない時代ですよ!

まとめると, 次回以降は 1) コスト計算(費用・時間), 2) コロニーの詳細, 3) 輸送手段, 4) エネルギーの確保, 5) 人々の関心を集めること, などについて調査してゆくことにする.

最後に, Pekka Himanen著の"The Hacker Ethic" (邦題: リナックスの革命 -ハッカー倫理とネット社会の精神)にこんな記述があった.

世界最大のコンピュータ企業重役たちは、パーソナル・コンピュータの未来を信じようとはせず、こんな見解を述べていた。「世界中のコンピュータ市場は、まぁ5台分くらいはあるかもしれません」(IMB社長トマス・ワトソンの、1943年の発言)。あるいは「人が自分の家にコンピュータを持ちたいと思う理由なんか一切ありません」(デジタル・エクイップメント社の共同創設者兼社長ケン・オルセン、1977年)。

これらって、当時の視点でみれば「ああ、なるほどね、納得」とうなずけるかもしれない. が, 今2005年の常識・現状からいうと, 「なにを寝ぼけたことをいってるんだ?」「今じゃコンピュータなんて家電品. 1人で複数台所有して使うのが珍しくない」.

宇宙開発の可能性や展望は現在のところは, 大体が, 軽視されているが, それも上のかつてのコンピュータに大してなされた冷笑のように, いずれ覆されるであろう. 飛行機が誕生したころも, 同じようなことが言われていたのではないだろうか (1903年ライト兄弟の成功の後, わずか66年後には人類は月に到達してるけどね).


余談

冒頭のおもちゃみたいな絵は, TgifとGIMPで描きました. 鉛筆で描いてスキャンした方がよりイメージに近いものができた気がするんですが, 描き方をもっと研究・練習しようと思います. これを機会にPhotoshop, Illustratorを購入しても良いかもしれないなぁ. せっかくPowerBookも入手することだし.